ChatGPTやClaudeの中身はLLM(Large Language Model・大規模言語モデル)と呼ばれる仕組みです。名前はいかめしいですが、正体はシンプル。「次の言葉を当てる」仕組みを、とんでもなく強くしたものです。魔法でも、考えるロボットでもありません。
この1本で、AIが「なぜ間違えるのか」「なぜ最新ニュースを知らないのか」「なぜ資料を渡すと賢くなるのか」が、全部ひとつの理屈で繋がります。
このシリーズの索引はAIの仕組みがわかる5つの言葉。本記事は第1回です。
予測変換の超強力版
スマホで「よろしく」と打つと「お願いします」が候補に出ますよね。LLMはあれの超強力版です。
世界中の文章を読み込んで、「この流れなら、次はこう続くことが多い」というパターンを覚えています。「むかしむかし、あるところに」と言えば「おじいさんとおばあさんが」と続けられる。物語を暗記しているからではなく、流れを掴んでいるからです。
では、なぜ「次の言葉を当てるだけ」で会話や文章作成ができるのでしょう。
「日本の首都は」の次を当てるには、東京という知識が要ります。文法も、言葉の意味も、世の中の常識も、ある程度わかっていないと当て続けられない。当てる精度を極限まで上げていったら、理解して会話しているように見えるようになった。 これがLLMの正体です。
「予測」だから起きる3つのこと
LLMが予測の仕組みだとわかると、AIの困った振る舞いが全部説明できます。
1. 知らないことも、それらしく答える
AIが選んでいるのは「正しさ」ではなく「もっともらしさ」です。たとえるなら、記憶力抜群だけど手元に資料がなく、絶対に沈黙しない解答者。知らないことを訊かれても、知識の断片をつなぎ合わせて自然な答えを組み立ててしまう。これが「ハルシネーション」です。嘘をつく意図はありません。
起きやすいのは、固有名詞の詳細、数字や日付、出典やURL、最新の出来事、マイナーな話題。逆に、渡した資料の要約や文章の書き直しでは起きにくい。付き合い方は「固有名詞・数字・日付・URLは自分で確認する」「資料を渡してから訊く」の2つで十分です。
2. 最近の出来事を知らない
学習は「ある時点まで」の文章で行われます。卒業アルバムと同じで、撮影日以降の出来事は写っていません。これを「知識の締め日(カットオフ)」と呼びます。故障ではなく性質です。最新情報が必要なときは、検索機能つきのモードで訊きます。試しに「あなたの知識はいつまで?」と訊いてみてください。
3. 長く話すと最初の指示を忘れる
AIが見ているのは、今の会話と渡した資料、つまり「机の上」だけです。机には広さの限りがあり、あふれた書類は見えなくなる。長い会話で最初の条件が効かなくなるのはこのためです。対策は、話題が変わったら新しい会話にする、大事な条件は途中で言い直す、資料は必要な部分だけ渡す。詳しくはコンテキストウィンドウとはで扱います。
いちばん大事なこと:差がつくのは「何を渡すか」
ChatGPTもClaudeも、モデルそのものは誰が使っても同じです。有料でも無料でも、プロでも初心者でも、同じ頭脳を使っています。
それでも使う人で結果に差がつくのは、AIに渡している情報の量と質が違うから。AIが使える情報は4つあります。
- もともと学習している知識
- Web検索
- つないだサービス(メール・チャットなど)
- あなたのパソコンの中のファイル
Webのチャット画面では4つ目が渡せません。Claude CodeやCodexのようなデスクトップ型のAIが「同じモデルなのに10倍便利」と言われるのは、4つ目まで渡してAIを「あなたの仕事」に届かせられるからです。
ただし、机は散らかすと鈍る。たくさん渡す、でも整えて渡す。 これがAIを使いこなす人の共通点です。
今日やってみる(5分)
- 使っているAIに「あなたは次の言葉を予測しているって本当?小学生向けに説明して」と訊く。この記事の説明と比べてみる
- 自分がいちばん詳しい分野で、マニアックな質問をする。答えのどこが正確で、どこが怪しいか採点する。「もっともらしさ≠正しさ」が体感できます
用語メモ
- LLM:Large Language Model。大規模言語モデル。ChatGPT・Claude・Geminiの中身
- トークン:AIが言葉を扱う最小単位。料金と上限はこれで数える → トークンとは
- コンテキストウィンドウ:AIが一度に見渡せる量。「机の広さ」 → コンテキストウィンドウとは
- ハルシネーション:知らないことを、それらしく埋めてしまう現象。嘘をつく意図はない
まとめ
LLMは「次の言葉を当てる名人」です。この見方ができると、AIの得意・不得意が読め、どこを確認すればいいかが決まり、頼み方が変わります。次は、AIの世界の通貨であるトークンとはへ。
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