AIと長く会話していると、こんな経験をしませんか。「最初に指定した条件を、途中から無視されるようになった」。
この謎を解く鍵がコンテキストウィンドウです。ひとことで言うと、AIが一度に見渡せる文章の範囲。AIの「机の広さ」です。机の上にあるものしかAIは使えず、机は散らかると仕事が鈍ります。
このシリーズの索引はAIの仕組みがわかる5つの言葉。本記事は第3回。前回はトークンとは。
AIは「机の上」だけを見て答えている
AIは、今の会話の全部と、渡した資料だけを見て次の言葉を作ります。この「見える範囲」がコンテキストウィンドウ。単位はトークンで数えます。
たとえるなら作業机。机が広ければ何十万トークン分の書類も並べられますが、無限ではありません。机からあふれた書類は見えなくなるか、ぼやける。長く会話していると最初の指示が効かなくなるのは、これが原因です。
数字の目安は、今のツールで数十万〜百万トークン規模。A4で数百枚ぶんです。広いですが、ファイルを丸ごと何十個も載せればすぐ埋まります。
「学習」と「机」はまったく別もの
ここで大事な区別をひとつ。会話の内容は、AIの「学習」には入りません。
| 学習 | 机(コンテキスト) | |
|---|---|---|
| いつ決まる | 工場出荷前。私たちは触れない | 会話のたびに、私たちが載せる |
| 中身 | 世の中の知識・言葉のパターン | 今の会話・渡した資料・指示 |
| 会話を閉じると | 変わらない | 片付けられる |
だから「昨日教えたのに覚えていない」は故障ではありません。机が新しくなっただけです。
会話をまたいで覚えているサービスもありますが、それは別のノートにメモを取り、次の会話で机に置き直している仕組みです。Claude CodeのCLAUDE.mdやCodexのAGENTS.mdというファイルも同じで、「毎回机に自動で載るメモ」を自分で用意しているのです。
机の使い方:たくさん渡す、でも散らかさない
AIの性能は「どれだけ情報を渡したか」で決まります(LLMとはで触れた通りです)。ただし机には限りがあるので、何でも載せると逆に鈍る。この2つの両立が、AIを使いこなす人の全てと言っていい。
- 話題が変わったら新しい会話。 机をきれいにした方が、目の前の仕事に集中できる
- 大事な条件は途中で言い直す。 「条件をおさらいします」と、書類を机の中央に置き直すイメージ
- 資料は丸ごとではなく必要な章だけ。 トークンの節約にもなり、精度も上がる
- 長い作業は要約して引き継ぐ。 「ここまでの要点と決定事項をまとめて」→ 新しい会話に貼って再スタート
- 毎回必要なことはファイルに書く。 前提・ルール・用語は
CLAUDE.mdのようなメモにして、机に自動で載るようにする
記憶の限界は弱点に見えますが、知ってさえいれば渡し方で補えます。AIに仕事を頼むのがうまい人は、例外なくこの机の広さを意識しています。
今日やってみる(5分)
- 長く続いているAIとの会話をひとつ選ぶ
- 「ここまでの要点と決定事項をまとめて」と頼む
- その要約を新しい会話に貼って、同じ仕事を続けてみる。返事の切れ味が戻るのを確かめてください
用語メモ
- コンテキストウィンドウ:AIが一度に扱える文章量の上限。「机の広さ」
- コンテキスト:机の上に載っているもの全部(会話・資料・指示)
- CLAUDE.md/AGENTS.md:Claude Code・Codexが毎回自動で机に載せるメモファイル
- 要約して引き継ぐ:机を片付けて、要点だけ新しい机に移す技。Claude Codeでは
/compactがこれをやる
まとめ
AIは机の上しか見ていない。この一点を覚えておけば、「忘れた」「指示を無視した」の正体がわかり、長い仕事の渡し方がうまくなります。次は、AIが大量の文書から意味で探す仕組み、ベクトルとはへ。
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